2月11日に開催されたWorld IA Day2012に参加してきました。そして、イベントが終了して、2ヶ月近く経とうとしている中で、空気を読まずに参加レポートを書かせていただきます。
IA(Information Architecture)とは
ここ最近、「IA」という言葉(言葉ととっていいのかという疑問はあるが)をよく耳にすることが多くなってきたという印象があります。
IAとは、知識やデータの組織化を意味し、探している情報を見つけやすく、情報をわかりやす伝える
というもので、分かり易くするデザインといえると思います。
インターネットのよいところは、情報が多いことだと思うのですが、多さのあまり探している情報が見つけにくかったりします。そのような情報を探しているユーザーを迷うことなく目的まで導くことが重要となってきているからであると思います。
World IA Day 2012 東京
その中、World IA Day 2012 東京(以下WIAD)は、日本初となるIAコミュニティ主催で世界14都市で同時開催されるイベントという身震いするような大規模なIAイベントです。登壇される方もIAのスペシャリストから学者からと様々な方達が登壇されました。当日のプログラムは下記のような感じです。
- 基調講演:ジョージ・アロンゴ(ビデオ)
- 基調講演:幅広いユーザーの理解のデザイン ~OpenUMプロジェクトを通じて~ / 坂本貴史(ネットイヤーグループ株式会社 UXディレクター)
- 基調講演:ルイス・ローゼンフェルド(ビデオ)
- 基調講演:ピーター・モービル(ビデオ)
- ユーザーエクスペリエンスを正しく理解する ~「UX」と「UXデザイン」~ / 安藤昌也(千葉工業大学)
- 行動経済学からわかるユーザーの行動とデザインのありかた / 山田歩(青山学院大学)
- 「ストーリーテリング(物語)」によるユーザー理解 / 前田俊幸(UX Tokyo主宰)
- パネルディスカッション:ストーリーとデザイン
- ユーザー理解に合わせたユーザーインターフェイスデザイン / 上野学(ソシオメディア株式会社
- パネルディスカッション:これからのUIデザイン
基調講演:ジョージ・アロンゴ(ビデオ)
ナビゲーターのコンセントの長谷川さんの開会の挨拶後にすぐに流れたジョージ・アロンゴの基調講演。この基調講演ですぐにこのイベントの空気に引き込まれる感覚を覚えたセッションでした。
彼の講演の中でもっとも印象に残っているのが、(1)情報を見つけ易いようにデザイン、(2)変化は様々であるが普遍なものは常に変わらないです。これらを自分なりの解釈としては下記です。
(1)は、ショッピングモールが例として挙っていました。ショッピングモールには、多くのサインがあり、それらは、来客に、注意を促したり、知らせたり、また探している情報を見つけ易くデザインされるている。これらのデザインによってユーザーの満足度に大きく左右されるからです。しかし、バランスが重要である。多い情報を十分な設計をせずにすると混乱を招くだけであると、確かにこれをWebサイトに置き換えると、Webサイトは情報を多く載せがちになってしまうし、似たような情報が多くあります。これがある意味、混乱を招く要因となっているのではないかと思います。これを最適に設計できることが大事になってくると感じました。
(2)は、技術などは変化していきます、それも急速に。しかし、積み上げた知識は変わることがありません。技術が変わっても、その新しい技術にも活かすことができる。変わらない知識と分野がIAである。
幅広いユーザーの理解のデザイン ~OpenUMプロジェクトを通じて~ / 坂本貴史
IAシンキング Web制作者・担当者のためのIA思考術の著者である坂本さんの講演でした。
セッションでは、「答えではなく問題を探す」がキーメッセージとなっていました。下記がセッション中にとったメモです。
- 答えがない、マニュアルに載ってないことに問題点にぶつかる。だから「答えではなく問題を探す」
- 問題に取り組む、どのような問題があり、いかに自分の意見を言えるか
- 目的にたどり着けるアプローチを探し見極める。
- 情報を得られるレイヤー、知恵、知識
- 伝えやすいようにする
- 利用者がなにを求めているのか、利用者中心の考え
- コンテンツファースト
- 論理的か直感的か、論理的な思考は最終的には直感に生かされる
問題は起こったときに、問題の解決を求めがちであるが、答えがない我々の仕事において、これはこうあるべき!という理想像に近づけるために、解決へのアプローチがなにが問題であるかを探す、というふうに捉えました。
基調講演:ルイス・ローゼンフェルド(ビデオ)
オライリーから出版されている「Web情報アーキテクチャ―」通称シロクマ本の著者の一人ルイス・ローゼンフェルドの基調講演です。主に、図書館情報学という なかなか聞き慣れない分野について話されていました。また、その中で 情報というチャレンジをどれがはやりで時代遅れか判断しなければならない
基調講演:ピーター・モービル(ビデオ)
同じくシロクマ本の著者のピーター・モービルは、下記の3点について話されていました。私自身の理解とメモです。
- to keep defining the damn thing
- cross-channel
- value(s)
1. 定義すること。これはピーター・モービルは、シロクマ本にIAを定義したことで、彼のことを名刺に肩書きに書いてなくてもIAの人と認識してされる。
2. 「不得意な分野は得意な人に学ぶ」これがcross-channel
3.イベントを通して、ともにビジネスと私たちの価値を高めていこうというものでした。
ユーザーエクスペリエンスを正しく理解する ~「UX」と「UXデザイン」/ 安藤昌也(千葉工業大学)
UXプリンスこと安藤先生は「UX」と「UXデザイン」の定義を下記のように仰っていました。
UXD:どんな体験をしてもらうかを計画すること、
体験そのものはユーザーの個人的なもの →UX
↑ ↓
どんな体験をしてもらうか計画すること →UXD
↑ ↓
体験が量産、再生産される仕組みを作ること →UXD
ユーザー経験デザインを「体験が量産・再生産される『仕組みを作る』こと」というのは納得度が非常に高く仕組みのデザインの発想は非常に重要だと感じた。
行動経済学からわかるユーザーの行動とデザインのありかた / 山田歩(青山学院大学)
このセッションはイベントの中で一番興味が沸いたセッションでした。「行動経済学」という名称からのとおりものすごいアカデミックの観点からの学説とデータばかりでした。しかし、それが根拠となるので非常に貴重な講演だったように思います。
その中でも、「選択肢は多いほどよいか」とうのがあって、例としてジャムが挙ってました。世間一般的にも、選択肢は多いほどよいと恐らく言われていると思います。ここでは、選択肢が多いほど、生活は豊かになるが、多いすぎるとよくない。と言われてました。 そのジャムの例をとっても、選択肢が多いと購買率が下がるという結果がでたからです。恐らく、多ければ多いほど、ユーザーを混乱させるからだと思います。
以下は、セッション中にとったメモです。
- 熟慮は選択に質を高めるか
- 嗜好の理由を分析すれば、人はそれらしき回答をすることができる。
- いかにも嗜好に左右するように見えるが、実際には重要でない要因に注目して、判断してしまう。
- 普段目にしたり、耳にしたりするのは思い出し易い。
- 一番目にでてくるほうが検索しやすいので、過ちを犯しやすい。
- 制作で言葉を変えるだけで、内容は同じでも数値がことなる。
- 「フレーミング効果。脂身25%と赤身75%、失業率5%と雇用率95%など、表現を逆にするだけで、人々の判断が変わる」
- 不要な選択肢をなくすことによって、判断もことなる、他に影響を与える。
- 「人々の選択を適切に導く『選択アーキテクチャ』の設計が大切」
「ストーリーテリング(物語)」によるユーザー理解 / 前田俊幸(UX Tokyo主宰)
このセッションは、僕自身の知識不足のせいかあまり耳にしたことがない「ストーリーテリング」についてでした。
セッションの冒頭で、オバマ大統領のMLの下りがあって、なんのことやらと思っていたら、「ストーリーテリングの目的」は、共感を引き出すこと、
ストーリーは共感(情動と結びついてる)を生んで最終的に行動に結びつけるとストーリーテリングのことを知らない僕のような人に説明されました。下記のようなフィードバックがストーリーではないかと説明されていました。
顧客に共感する → 顧客を知りたくなる → 顧客を調べる → 共有したくなる → 顧客に共感する
そして、ストーリの作り方の構成要素や構成パターンを説明いただきました。
構成要素
- 視点
- コンテクスト
- キャラクター
- 心的イメージ
- 言葉遣い
構成パターン
- 規範的
- 英雄
- 新しいものに親しむ
- フレーム構造
- 階層的
- 文脈的幕間
しかし、自分の理解力が足りないのか、いまいちつかみどろこがなかったです。そのつかみところというのが「ストーリーテリング」のつかいどころですが、 どのようにして活用していくのか、これを最適にするには、ということで、「ストーリーテリング」の意味も含めて、疑問ばかりが残りました。
ストーリとストーリーテリングの違いみたいなのが、下記に載っているので、参考までに(←自分向けです)
ストーリーテリング - HUMAN VALUE
ユーザー理解に合わせたユーザーインターフェイスデザイン / 上野学(ソシオメディア株式会社
最後のセッションは、内容の中心としては、「モーダルvsモーダレス」で非常に興味深いものでした。世の中には、いろんなユーザーインターフェースのデザインパターンが存在しますが、大きく2つ、両極のコンセプトであるとれが「モーダル」と「モードレス」です。
どうやら「モードレス」というのは、Appleのインターフェースガイドラインに出てくる言葉ということで、Appleが推奨しているということです。「モーダル」と「モードレス」と言われても分かりにくいので、例を挙げると下記のような例になります。
モーダル
モードがある状態。コンピューターを使っていて「なんとかモード」に入って作業をするようなもの。
動詞 → 名詞:命令を選んでから対象物を選ぶこと。
言語的:シーケンシャルであること、手続き的であること、始めと終わりが決まっていること。
ユーザーが行うタスクに会わせてデザインされる
- 電車
- 直進ボタン|左折ボタン|右折ボタン
- コース料理
- Windowsの「画面のプロパティ」コントロールパネル
- タスクベースの画面遷移
モードレス
モードがない状態。自由な順序と方法で作業するようなもの。
名詞 → 動詞:対象物を選んでから命令を選ぶこと。
空間的:例えば GUI。2次元の空間上にオブジェクトが置いてあって自分の好きな順序で操作していい。
ユーザーが扱うオブジェクトに合わせてデザインされる
- 自動車
- ハンドル
- お弁当
- Mac の「デスクトップとスクリーンセーバ」環境設定
- オブジェクトベースの画面遷移
セッションの中で、「ユーザー理解=自分なりの使い方ができる」ことを挙げられていて、どうも「モードレスデザインこそ最高」という風に捉えれられる内容でした。それがダメなのかというとそうではないですが、すべてのアプリケーションがモードレスデザインであるほうが優れているとは思えなかったからです。
また、「シンプルにする」というのも挙っていました。これは非常に納得します。納得するのですが、 シンプルなデザインがモードレスであるとするならば、それは違うと感じています。モーダルであってもシンプルにデザインできるのではないかと思うからです。また、人の様々な属性にも依存すると思うからです。モードレスデザインのデメリットに「使いこなすには創造性が必要」挙げられていましたが、操作に創造性が必要があるならば、ユーザーを迷わすことになるので、シンプルと反するデザインになってしまうのではないかと感じました。
それを考えると、モードレスやモーダルが重要ではなくて(もともと重要とは述べてませんでしたが)、シンプルで分かり易いというひとつのコンセプトでよいのはないかと感じました。しかし、非常にセッション内容は面白く基調講演を除けば、一番関心が沸いたセッションでした。
まとめ(ほぼ感想[じゃー感想と書けばいいんじゃね?])
このイベントを通してまずは自分がもともと感じていた「情報は多くしない」「シンプルに」が確信に変わりました。
しかし、それと同時にアカデミックな要素が詰まりまくったIAという分野の奥深さと自分自身の理解力の浅さが分かりました。さらに、その浅さが分かったのですが、どの部分を埋めれば深くなるのかが明確になりませんでした。
奥が深く広いといえばそこまでですが、どこかで今より知識が深くなれるように努力するだけです。
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